Kōtarō Takamura

始めの『人に』は愛する人を他の男に奪われた失意の詩でこれはこれでとてもよい。頁が進み、書かれた年月も​進むと、『僕等』辺りからぐっと肉欲的で官能の世界となる。妻の名である智恵子という固有名詞が詩において作者の深層心理をあらわす道具となっている。しかし長くはつづかない。『人生遠視』で"狂う"という言葉が出てくる。私はその異常に気づかず、そして『レモン哀歌』『梅酒』にて決定的な事態を知る。再度逆順に辿って、『人生遠視』の記載に大きな転機を見つけるのだ。… (mer)